- 2024年10月9日
- 2024年11月28日
関節リウマチ(RA: Rheumatoid Arthritis)
「手や足の関節が痛い」
「リウマチの気があると昔、言われた」
「関節リウマチじゃないか不安」
関節に炎症を引き起こし、関節の破壊や変形を引き起こす怖い病気の関節リウマチ。
今回は関節リウマチについて解説します。
目次
関節リウマチとは
関節リウマチ(RA: Rheumatoid Arthritis)は、自己免疫疾患(免疫システムが誤って自分自身の関節の組織を攻撃してしまう病気)の一つで、主に関節に炎症を引き起こし、進行すると関節の破壊や変形を招く慢性疾患です。
関節リウマチを放置しておくと自分の全身の関節を攻撃して手や足などの関節が徐々に破壊されてしまいます。
全世界の成人人口における関節リウマチの罹患率は約0.5〜1.0%。男女比はおおよそ1:3で女性に多く発症します。40〜60歳で発症することが最も多いですが、どの年齢でも発症する可能性があります。近年は高齢化もあり、高齢発症関節リウマチ:EORA(Elderly-Onset Rheumatoid Arthritis)の患者数も増加傾向にあります。
関節リウマチ(RA)は、慢性的な自己免疫疾患であり、主に関節に炎症を引き起こしますが、全身にも影響を及ぼすことがあります。心血管疾患(心臓病、脳卒中)や骨粗鬆症のリスクを上昇させ、適切な治療を受けていない場合一般的に寿命が5〜10年短縮するとされています。
現代では、治療法の進歩により、早期診断と治療を受けた患者では、寿命は健常者とほぼ変わらないレベルにまで改善されていますが、早期診断、早期治療が非常に重要です。
関節リウマチの症状
関節リウマチ(RA)は、主に体中の関節に変形をきたす①関節症状を中心とする病気ですが、自己免疫疾患の一つである関節リウマチでは全身にもさまざまな影響を及ぼすことがあります。これを②関節外病変と言います。
①関節症状の特徴
- 小さな関節(手や指、足の関節)に痛みと腫れがある
- 両側対称に痛みや腫れ、熱感がある
- 関節の変形がある
- 関節のはれる場所が変わる
- 複数の関節に痛みや腫れがある
- 朝に指のこわばり、動かしにくさを感じる
- 関節の痛みやこわばりがなかなかひかない(6週間以上)
関節リウマチは全身の関節を障害する病気なので、どの関節でも発症する可能性がありますが、特に手や足の指の第2、第3関節のような小さい関節を中心に痛みや腫れが出てくるのが特徴です。
下に関節リウマチのように指の痛みが出る病気である、へバーデン結節・ブシャール結節と関節リウマチの違いについてのコラムがあるので合わせてご覧ください。
また、自己免疫疾患の一つである関節リウマチでは全身にもさまざまな影響を及ぼすことがあります。これを関節外病変と言います。
②関節外症状の特徴
- 微熱が続く
- 疲れやすい:貧血
- 肘や手指など、皮膚の下に硬いしこりがある:リウマトイド結節
- 目が乾く:乾燥性角結膜炎
- 咳や息切れする:間質性肺炎など
- 胸の痛みがある:胸膜炎、心膜炎
- 皮膚の潰瘍:リウマチ性血管炎
上記のうちの症状が1つでも当てはまれば、関節リウマチのの可能性があります。また、日本固有の概念ですが、関節外症状が複数出ている場合は悪性関節リウマチ(難病)という重篤な状態になることもあります。
悪性関節リウマチについては⇩こちろ
関節リウマチは関節の病気というイメージが強いですが、全身に多様な影響を与え、寿命にも影響を与えるため、早期発見、早期治療が非常に重要です。
関節リウマチの原因は?
関節リウマチ(RA)の明確な原因はまだ完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していることがわかっています。これらの要因が複合的に作用することで、免疫システムが誤って自己の組織(特に関節)を攻撃し、炎症を引き起こすと考えられています。
主な要因としては遺伝的要因と環境的要因に分けられます。
- 遺伝的要因
- 関節リウマチの発症には、遺伝的な要素が強く関与しています。HLA-DRB1遺伝子、PTPN22遺伝子、STAT4遺伝子、IL-6遺伝子などがあげられます。
- 環境要因
- 喫煙
- 歯周病
- 微生物叢(腸内フローラ)の変化
- 感染症
- ストレスや外的要因
関節リウマチの病因ははっきりしていませんが、遺伝的要因に環境要因が加わることで自己寛容(自分の組織を正しく認識し攻撃しない)が破綻して起こる自己免疫疾患と考えられています。そのため、環境要因の改善は関節リウマチの治療においても重要で、禁煙や口腔ケアなども非常に大切です。
関節リウマチで関節が破壊される理由
関節リウマチが発症し、関節が破壊されるまでに次のような順番をたどります。
- 免疫システムの誤作動(初期段階)
- 遺伝的な原因に環境の要因(喫煙など)が加わり、自分の免疫システムが関節の正常な組織を外敵と誤認し、攻撃を開始します。免疫細胞であるT細胞:(マクロファージ、好中球の誘導) や B細胞が活性化され形質細胞(:リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体を産生)へ分化し、関節内で炎症反応が増幅されます。この時点では関節は破壊されていません。
- 滑膜の炎症と肥厚(滑膜炎)
- 免疫細胞が関節に侵入すると、滑膜(関節を覆う薄い膜で、関節液の分泌などを担う)が炎症を起こします:滑膜炎。滑膜からサイトカイン(特にTNF-α、IL-1、IL-6など)が分泌され、持続的な炎症が引き起こされます。
- パンヌス(肥厚した滑膜)の形成と拡大
- 肥厚した滑膜(パンヌス)は、正常な関節を犯し、破壊の初期段階が進行します。関節内で軟骨に被われていない bare area(ベアエリア)といわれる滑膜と骨の境界部から骨破壊が進むことが特徴です。また、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)と呼ばれる酵素が活性化され、軟骨の主要成分であるコラーゲンやプロテオグリカンを分解しま。
- 炎症性サイトカインによる軟骨・骨破壊の促進
- 関節内で分泌される炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-1、IL-6など)が関節破壊をさらに加速させます。軟骨が失われることで、関節のクッション作用が減少し、骨同士が直接接触するようになり、さらに痛みが悪化します。
- 破骨細胞の活性化による骨破壊
- 滑膜炎と並行して、骨の破壊も進行します。これは、関節リウマチで炎症性サイトカインがRANKLの産生を促進し、破骨細胞を異常に活性化されます。破骨細胞は骨を吸収し、骨びらんと呼ばれる骨の欠損を引き起こします。
- 関節の不安定化と変形
- 軟骨と骨の破壊が進行すると次第に変形していきます。関節リウマチで特徴的な変形としては下記のようなものがあります。
- 尺側偏位
- スワンネック変形(DIP関節過過伸展、PIP関節屈曲)
- ボタンホール変形(DIP関節屈曲、PIP関節過伸展)
- 軟骨と骨の破壊が進行すると次第に変形していきます。関節リウマチで特徴的な変形としては下記のようなものがあります。
- 関節の機能障害と痛みの悪化
- 最終段階では、関節が完全に破壊され、変形した関節は正常に動かすことができなくなります。これにより、日常生活における機能が大幅に低下し、慢性的な痛みが続きます。関節の変形や破壊が進行した場合、手術などの外科的介入が必要になることもあります。
このような経過を経て、関節リウマチでは関節の破壊が進行します。
関節が破壊される機序・理由が、検査や治療につながります。
関節リウマチの診断治療ガイドラインの変遷
国際的な専門組織であるアメリカリウマチ学会(American College of Rheumatology, ACR)や欧州リウマチ学会(European League Against Rheumatism , EULAR)では定期的に関節リウマチやリウマチ性疾患(乾癬性関節炎、全身性エリテマトーデスなど)の診断や治療に関して、医療現場で統一された高水準の治療を提供する目的で最新のエビデンスに基づいたガイドラインを定期的に更新し、策定していします。
最も昔に公開された関節リウマチのガイドラインとしてはアメリカリウマチ学会(American College of Rheumatology、ACR)が1987年に定めたガイドラインが代表的です。特定の症状や臨床的特徴から関節リウマチの診断を標準的に行うため策定されました。関節リウマチの特徴を理解する上では、現在でも有意義です。
①1987年版 ACR診断基準
2. 3つ以上の関節(手、手首、肘、膝、足など)での炎症(6週間以上)
3. 手の関節(手首、MP関節、PIP関節)における炎症(6週間以上)
4. 対称性の関節炎(6週間以上)
5. 皮下結節(リウマトイド結節)
6. リウマトイド因子(RF)の陽性
7. X線での関節破壊
①-⑦の4つ以上を満たす場合、関節リウマチと診断
この基準は、臨床医が関節リウマチの診断を行うにあたって、1990年代後半までは1987年版 ACR診断基準が用いられてきました。一方で初期の関節リウマチや軽症の患者を診断することが難しく、早期診断には限界があったため、初期の関節リウマチの早期治療が難しく、関節の変形が出てしまってからの治療になるなどの課題がありました。
その後検査精度の上昇や研究の進化、現在の関節リウマチの第一選択薬であるメトトレキサート(MTX)が、1999年に日本で承認されるなどにより、2000年代ごろから関節リウマチの治療が飛躍的に進化し、2010年にはACRとEULAR(European League Against Rheumatism、欧州リウマチ学会)による新しい診断基準が導入され、より早期の段階での診断や治療介入が可能となるように改善されました。
②早期診断と治療の重要性の強調(2000年代初期):
- 早期診断と治療開始がRAの予後に大きな影響を与えることが明らかになり、「できるだけ早く治療を開始する」という概念が導入されました。これにより、関節の損傷を防ぎ、機能を維持することが目指されるようになりました。
- メトトレキサート(MTX) が標準的な初期治療薬とされ、特に早期段階での使用が推奨されました。
③治療目標としての寛解・低疾患活動性(2010年版ガイドライン):
- EULARは、治療の最終目標として 寛解(疾患の活動がない状態)、または少なくとも 低疾患活動性(LDA) を目標とし、治療の進捗を定期的に評価し、効果が不十分な場合には積極的に治療を変更する方針ことを明確にしました。この概念は、「Treat-to-Target(T2T)」と呼ばれ、現在における関節リウマチの診断・治療の中核となる考え方が提唱されました。
④生物学的製剤の導入と活用(2010年代):
- TNF阻害薬 などの生物学的製剤が開発され、メトトレキサート(MTX)などの既存の抗リウマチ薬:CS DMARD(Conventional Synthetic Disease-Modifying Antirheumatic Drugs、従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬)のみではコントロールが難しい患者さんにおいて、これらの生物学的製剤が推奨されるようになりました。特にMTXで効果が不十分な場合、TNF阻害薬やその他の生物学的製剤(IL-6阻害薬、CTLA-4拮抗薬、B細胞抑制薬など)が推奨されるようになりました。
⑤JAK阻害薬の導入(2017年版ガイドライン):
- 新しい治療オプションとして、JAK阻害薬(ジャヌスキナーゼ阻害薬)が登場しました。これは、免疫系のシグナル伝達を阻害することで、炎症を抑える薬です。JAK阻害薬は、生物学的製剤と同等の位置づけで使用できるとされ、特に生物学的製剤で効果が得られない患者に対して推奨されました。
- この薬剤は、経口薬であるため注射の必要がないという点でも注目されました。
⑥個別化治療の強調(2019年版ガイドライン):
- EULARは、治療を患者ごとに調整することの重要性を強調しました。患者のリスク因子(年齢、合併症、疾患活動性など)や、薬剤の副作用、費用対効果を考慮しながら治療方針を決定することが推奨されています。
- また、生物学的製剤やJAK阻害薬の使用時には、メトトレキサートを併用することが推奨されることが多いものの、メトトレキサートの使用が困難な患者(高齢者など)に対しては生物学的製剤の単剤療法が可能な薬剤(IL-6阻害薬、T細胞共刺激阻害薬など)も承認されるようになりました。
⑦個別化治療と費用対効果(2023年版ガイドライン):
- 最新のガイドラインでは、依然として「Treat-to-Target(T2T)」戦略が中心ですが、リスクベースの治療方針がより強調され、患者ごとの特徴に基づいた最適な治療法を選択することが求められています。
- また、経済的側面 にも配慮し、ジェネリック薬やバイオシミラー(先行バイオ医薬品と同等の品質、安全性、有効性を持つことが科学的に証明された生物学的製剤)の使用が推奨される場合があり、費用対効果も治療選択の重要な要素となっています。
EULARのガイドラインは、関節リウマチの治療において、最新のエビデンスに基づき適宜更新されています。より早期の最適な治療で関節リウマチから全身を守る目的でガイドラインの策定が行われています。
関節リウマチの検査
関節リウマチ(RA)の診断は、症状、臨床所見、血液検査、画像検査を組み合わせて行います。
①問診と身体診察
- 症状の確認: 患者の症状や家族歴、関節痛や腫れ、こわばりなどがどの程度続いているかを調べます。朝のこわばりなどの特徴があるかなどもチェックします。
- 関節の状態確認: 手、手首、膝など、複数の関節が対称的に腫れているか、または痛みがあるかを確認します。特に小関節(手の指、足の指)の腫れや痛みが特徴的です。
②血液検査
関節リウマチの診断では、いくつかの特異的な抗体や炎症マーカーを検査します。これにより、診断や進行度の評価が行われます。
- リウマトイド因子(RF): 多くの関節リウマチ患者で陽性となる抗体です。RFが陽性である関節リウマチ患者は、陰性の患者に比べて、関節破壊が進行しやすく、重症化する傾向があります。(高力価の場合)。名前とは裏腹に関節リウマチ以外の疾患でも陽性になることがあります。
- 抗CCP抗体(抗シトルリン化ペプチド抗体、ACPA): 関節リウマチに非常に特異的な抗体で、発症早期診断に有用です。抗CCP抗体は関節リウマチ患者の約70~80%の患者で陽性となり、特異度が高いです。また、CCP抗体が陽性である関節リウマチ患者は、陰性の患者に比べて、関節破壊が進行しやすく、重症化する傾向があるため、治療方針の決定にも役立ちます。歯周病と喫煙が抗CCP抗体産生に影響を与えます。
- 炎症マーカー:関節リウマチで関節の炎症がある場合に上昇します。
- C反応性蛋白(CRP): 炎症の程度を示す指標。
- 赤血球沈降速度(ESR): 炎症があると上昇する血液の沈降速度を測定します。
- 全血球計算(CBC): 貧血や白血球の異常があるかどうかを調べるために行います。関節リウマチでは慢性的な炎症により貧血が見られることがあります。
これらのほかにも、他の疾患を除外するために抗体検査や補体検査なども行われます。
③画像検査
関節の損傷や炎症の評価に使用され、関節リウマチの進行度や治療効果の判断に役立ちます。
- X線検査: 関節の破壊や骨びらんの有無などを確認します。特に、進行した関節リウマチではこれらの所見が明らかになりますが、初期段階では変化が見られないこともあります。
関節リウマチは進行すると、体全体の関節が障害されます。代表的なレントゲン所見としては
頚椎
- 環軸椎亜脱臼(atlantoaxial subluxation、AAS):第一頸椎(環椎、C1)と第二頸椎(軸椎、C2)の間の靭帯や骨の破壊により、不安定性が生じ、環椎が前方に滑る。重度の症例では脊髄圧迫による麻痺や呼吸困難が生じることもある。
- 軸椎垂直亜脱臼(Vertical Atlantoaxial Subluxation):VAAI:軸椎(C2)が垂直方向に脱臼する病態
- 頸椎軸椎下病変(Sublaxial leision):軸椎(C2)よりも下位の頸椎(C3以下)に発生する異常や病変。関節リウマチのコントロールが不良な例で生じることがある。
手
- ボタン穴変形(Boutonniere deformity):滑膜炎による関節の腫大により、DIP関節過伸展・PIP関節屈曲の変形が生じる
- スワンネック変形(Swan neckdeformity):DIP関節屈曲・PIP関節過伸展・MP関節屈曲の変形が生じる
- MP関節尺側偏位:手指のMP関節(中手指節関節)が小指側(尺側)に向かって偏位する
足
- 外反母趾:母趾が小趾側を向く。
- 内反小趾:小趾が母指側を向く
- 開帳足:横アーチの低下により、前足部の幅が広がる
- 偏平足:縦アーチの低下にし、足の裏全体が地面に接する状態になる
- Claw toe(鷲爪変形):足の第2ー第5足指のDIP関節屈曲・PIP関節屈曲・MTP関節伸展の変形。指の上部や先端にタコや胼胝ができ、痛みの原因になる。
- Hammer toe(槌状変形):足の第2ー第5足指のDIP関節過伸展・PIP関節屈曲の変形
- 超音波検査: 滑膜の炎症や関節内の液体の増加を評価します。検査者によってのばらつきはありますが、X線よりも早期の関節炎を検出できる場合があります。関節リウマチでは、関節内の炎症を反映して、パワードップラー法で血流が豊富になります。
- MRI(磁気共鳴画像): 骨びらんや滑膜炎の有無などの詳細な変化を検出しできまう。特に早期関節リウマチの診断に有効です。
④関節液検査
関節液が貯留している場合、関節液の炎症の有無や感染症、痛風、偽痛風などの他の関節炎の可能性がないか考慮します。関節リウマチの関節液は、炎症細胞の増加により混濁した関節液となり、滑膜の炎症により、関節液の産生が増え、粘性が低下します。
①問診と身体診察②血液検査③画像検査の三つは関節リウマチの診断において、必須です。
関節リウマチの診断
関節リウマチの診断を行うための考え方としては、次の①-③の手順で関節リウマチかどうかを判断します。
- 1つ以上の関節の腫れや痛みがあるか。
- 関節に症状がない場合は関節リウマチの診断にはなりません。
- より可能性が高い他の関節炎疾患ではないか。
- 関節に痛みがでる病気は多数あります。問診や臨床所見などから、他の関節炎疾患がより疑われる場合は、関節リウマチとは分類されません。
- 骨びらんがあるか
- 単純レントゲンでわかるような骨びらんがある場合は関節リウマチの診断となります。
- 関節リウマチ分類基準に当てはまるか。
- ACR/EULAR 2010年 関節リウマチ分類基準を満たす場合に関節リウマチと診断します。
ACR/EULAR 2010年 関節リウマチ分類基準
関節リウマチの診断にあたって、2010年にACR/EULARが策定した関節リウマチのガイドライン(2010年版)にそって診断を行います。具体的には以下の4つのカテゴリーがあり、合計6点以上で関節リウマチと診断されます。
①関節の腫れ(関節痛)部位の数と範囲(0〜5点)
0点から5点までで評価し、症状の範囲に基づいて点数が加算されます。手や足などの小関節ほど高い点数(関節リウマチの可能性が高い)となります。
- 1大関節(肩、肘、股、膝、足首): 0点
- 2〜10大関節: 1点
- 1〜3小関節(手の指、足の指、手首など): 2点
- 4〜10小関節: 3点
- 10以上の関節(少なくとも1小関節を含む): 5点
②血清学的検査(リウマトイド因子[RF]や抗CCP抗体): 0〜3点
抗体の陽性・陰性に基づいて点数を付けます。特にCCP抗体は関節リウマチの早期診断や予後予測に使われることも多く、高値であれば関節破壊が進行するリスクが高ります。
- RFおよび抗CCP抗体が両方とも陰性: 0点
- 低陽性(基準値より少し高い場合): 2点
- 高陽性(基準値の3倍以上の場合): 3点
③炎症反応の有無(CRPおよびESR(赤血球沈降速度)): 0〜1点
関節リウマチ患者の体内の炎症レベルを反映する検査項目であり、治療効果や疾患活動性をモニタリングするためにも使われます。CRPは急性期反応タンパク質と呼ばれ、関節リウマチの活動性や病勢の急激な悪化をリアルタイムで把握するのに役立ちます。一方ESRはCRPに比べて、より長期間の炎症の状態を反映するため、関節リウマチの慢性炎症の評価に役立ちます。
- CRPとESRが正常: 0点
- CRPまたはESRが異常(基準値を超える): 1点
④症状の持続期間: 0〜1点
関節リウマチは慢性的な炎症をきたす病気であり、症状の持続期間によって点数が決まります。
- 6週間未満: 0点
- 6週間以上: 1点
一方、この分類基準で合計点が5点以下の場合はその時点では関節リウマチと分類できませんが、将来的に関節リウマチに分類可能となる場合もあるため、必要に応じ後日改めて評価することで、関節リウマチの診断にいたることがあるので、一度診断されていないからといって、関節リウマチでは無いと断定しないことが重要です。
関節リウマチの鑑別
関節リウマチは全身の関節が障害される病気ですが、関節リウマチとの鑑別が必要な、関節や全身に腫れや痛みを引き起こすような他の疾患との区別が重要です。
鑑別疾患
- 変形性関節症
- 初期には炎症が少ない。体重をかける大関節(膝、股関節)に起こりやすい。
- 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
- 指や足趾の「ソーセージ状」腫脹(指趾炎)が特徴。関節炎は非対称性であることが多く、乾癬の皮膚病変(特に肘、頭皮、膝の部位)を伴うことが多い
- 感染性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
- 痛風・偽痛風
- 関節液から尿酸結晶やピロリン酸カルシウム結晶が見られる。急性の発作が特徴的
- リウマチ性多発筋痛症
- 高齢者に多く肩や腰周辺に広範囲の筋肉痛を伴う。筋肉や関節周囲の組織の痛みが主。
- 強直性脊椎炎(AS: Ankylosing Spondylitis)
- 脊椎や仙腸関節に強い炎症が主。
- RS3PE症候群(アールエススリーピーイーしょうこうぐん)
- Remitting Seronegative Symmetrical Synovitis with Pitting Edemaの略で、急性の対称性関節炎と手背や足背の圧痕性浮腫が特徴。手足の関節痛やこわばりはあるが、関節破壊は通常見られない。リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体は陰性。
- 掌蹠膿疱症性骨関節炎(しょうせきのうほうしょうせいせつえん)
- 主に胸鎖関節、肋骨鎖骨関節、肩関節などの体幹近くの関節炎が主。手のひらや足の裏の膿疱(掌蹠膿疱)が反復的に出現する。リウマチ因子(RF)や抗CCP抗体は通常陰性
- 炎症性腸疾患にともなう関節炎(炎症性腸疾患(IBD)関連関節炎)
- 大関節(膝、股関節、足関節など)や軸性関節炎(仙腸関節や脊椎)が多い。リウマトイド因子(RF)や抗CCP抗体は通常陰性。
- 全身性エリテマトーデスなどの膠原病
- 関節痛は非破壊性。骨びらんは少ない。 軟部組織の弛緩により手指変形:Jaccoud 変形があることも。補体価(C3、C4)の低下、抗核抗体(ANA)、抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体陽性などが特徴
- 反応性関節炎
- 感染後に発症する関節炎。HLA-B27がリスク因子。リウマチ因子(RF)や抗CCP抗体は通常陰性
など、全身の関節が障害される疾患などがあげられます。
上の表は関節リウマチと関節リウマチ以外の関節症状をきたす病気の鑑別疾患を鑑別の難易度別に表したものです。関節リウマチの鑑別疾患は多岐にわたり、また治療法も病気によってさまざま異なります。もし、関節の痛みがあるようであれば整形外科を早めに受診しましょう。
関節リウマチの予後不良因子
関節リウマチ(RA)の予後不良因子は、疾患の進行や治療効果に大きく影響を与えるます。診断時より予後不良因子を確認し、治療の強度を調整する必要があります。
予後不良因子
- 血清学的因子
- リウマトイド因子(RF)陽性および抗CCP抗体陽性の患者は、より重篤な関節破壊や疾患の進行が予測されます。これらの抗体が高い患者はより関節破壊が急速になります。
- 関節外症状
- 関節外症状(肺、心臓、血管炎など)が見られる患者は、全身に疾患が波及しているため、予後が悪いとされます。
- 多関節炎
- 発症時に複数の関節が炎症を起こしている場合や、関節の腫れが多く確認される場合は、関節破壊が進みやすいです。
- 早期の骨びらん
- 発症初期にレントゲンで骨びらんが認められる患者は、病状の進行が速く、将来的に関節機能の喪失のリスクが高いです。
- 高疾患活動性
- 疾患活動性スコア(DAS28)が高い、またはCRP値やESR(赤血球沈降速度)が上昇している場合は、炎症が強く進行性であることを示唆し、予後が悪化しやすいです。
- 治療に対する反応不十分
- メトトレキサートや生物学的製剤などの標準的な治療に対する反応が不十分な患者は、疾患の制御が難しく、予後が悪くなる傾向があります。
- 若年発症
- 若年での発症は、長期的な疾患の影響を受けやすく、より重篤な関節破壊が進行するリスクが高いです。
- 遺伝的要因
- HLA-DR4やHLA-DRB1遺伝子が陽性であると、RAの重症化や関節破壊が進行しやすいことが報告されています。
関節リウマチの治療概念
早期治療の重要性:Window Of Opportunityについて
関節リウマチ治療のWindow Of Opportunity(治療機会の窓)という考え方をご存じでしょうか。
関節リウマチは適切な治療が行われなければ、発症から2年以内に患者さんの70~90%でレントゲン上で骨びらん(関節破壊)が現れます。一度破壊された関節は、基本的には元通り戻すことが困難であるため、関節破壊を予防するためには早期に適切な治療を導入する必要があります。(近年、骨びらんに対して、プラリアという骨粗鬆症のお薬を使用することで骨びらんの改善が見られたという報告はあります。)
治療反応性にはある一定の限られた時期にのみ存在する薬剤感受性の高い時期があり、これをWindow Of Opportunity(治療機会の窓)と言います。この時期にいかに早く治療を開始できるかが、将来的な関節リウマチによる関節破壊から守るためには重要です。
関節リウマチ治療開始のタイミング
関節リウマチと診断までは至らないものの中に診断未確定関節炎という概念があります。診断未確定関節炎(Undifferentiated Arthritis, UA)とは、関節の痛みや腫れなどの症状があるものの、特定の関節炎の診断基準を満たさない状態を指します。
例えば関節リウマチやSLE、乾癬性関節炎などの疾患の可能性があるももの、特徴的な症状が出そろっていないため、診断が確定しない初期段階の関節炎です。
その中から徐々に関節リウマチの特徴がはっきりしてくることで、関節リウマチの診断になります。その過程は以下の通りです
関節リウマチの進行過程
- ①前段階
- RF,CCP抗体の陽性化
- ②発症
- 朝のこわばりや関節炎、易疲労感などの出現
- ③早期診断
- ACR・EULAR(2010)の基準
- リスク因子の評価(RF,CCP抗体の抗体価や活動性)
- ④診断
- ACR(1987)分類基準
- ⑤進行期
Window Of Opportunityの考え方は③の段階(場合によっては②の診断未確定関節炎の段階)で関節リウマチの治療を行うことで、関節リウマチの関節破壊を抑制し、より効果的な治療を可能にします。
関節リウマチの関節破壊に至る過程の詳しくは⇩
関節リウマチで関節が破壊される理由はこちらさらに、関節リウマチ治療の効果的なアプローチとして「Treat-to-Target(T2T)」という方法が広く採用されています。
Treat-to-Target(T2T)
Treat-to-Target(T2T)は関節リウマチの治療において、治療目標を設定し、それを達成するために治療計画を進める方法の一つで、リウマチ治療における効果的なアプローチとして採用されています。 T2Tでは寛解(疾患の活動がない状態)、または少なくとも 低疾患活動性(LDA) を目標と、その状態を維持することで、関節の破壊を抑制します。
その目標を達成するために、治療を定期的に評価し、効果が不十分な場合には積極的に治療を変更を行うことが勧められています。治療効果を最適化し、目標達成を共有することで、患者様も治療に対して前向きになりやすく関節リウマチの適切なコントロールを行うことができるなどのメリットがあります。
その治療効果の評価方法としてはDAS28(疾患活動性スコア)、SDAI(簡易疾患活動性指数)、CDAI(臨床疾患活動性指数)などがあります。
関節リウマチの疾患活動性についてはこちら関節リウマチの治療薬
関節リウマチ(RA)の治療薬は、病気の進行を抑えることを目的に、さまざまなタイプの薬剤が使用されます。治療薬の選択は、病気の重症度や進行度、患者の個別の状況に応じて決定されます。
前述のように、ACR・EULARが発行するガイドラインは定期的に更新されますが、日本リウマチ学会も治療アルゴリズムを定期的に更新しています。2024年現在、日本リウマチ学会から関節リウマチガイドライン2024が発行されています。
関節リウマチの治療は主に、①主治療と②補助的治療にわかれます。主治療は免疫系の異常を抑制し、炎症をコントロールすることにより、関節の破壊や機能障害を防ぐことを目的に行われます。一方、補助治療は関節の破壊の進行を予防する目的ではなく、炎症や痛みの管理を行うことで患者のQOL向上を図る治療です。
①主治療について
主治療は原則的に6か月以内に寛解(疾患の活動がない状態)、または少なくとも 低疾患活動性(LDA) が達成できない場合は次のフェーズ(フェーズ①→②→③の順)に進みます。
主治療で用いられる薬物治療の手順としては以下の通りです。
- メトトレキサート(MTX)の開始・増量(場合によっては他のcsDMARDsも)
- 関節リウマチ(RA)の治療において最も広く使用される疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の1つで、RA治療の「第一選択薬」(Key Drug)として位置付けられ、炎症を抑え、関節の破壊を防ぐ効果があります。費用対効果も優れていることから、可能であればメトトレキサートでのコントロールを行います。ご高齢の方や合併症がある方、副作用が出る方は他の薬が選択される場合もあります。
- 生物学的製剤(bDMARDs)またはJAK阻害薬の使用
- MTXや他のcsDMARDsでコントロールが難しい場合に併用します。JAK阻害薬は内服で治療可能であり、短期的にはTNF阻害薬と同等の効果が認められていますが、長期的な使用において、心血管イベントのリスクや医療経済の面から、2024年のガイドラインではJAK阻害薬と生物学的製剤では、生物学的製剤の使用を優先することになりました。
- 他の生物学的製剤やJAK阻害薬使用
- TNF阻害薬などの生物学的製剤を使ってもコントロールができない場合は、生物学的製剤の変更が必要になります。効果不十分であった場合は、同じTNF阻害薬から選ぶのではなく、違うタイプの薬剤(TNF阻害薬からJAK阻害薬への切り替えなど)を優先します。
抗リウマチ薬の具体的な薬剤(疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)
- 従来型合成DMARDs(CS DMARDs)
- 生物学的DMARDs(bDMARDs)
- JAK阻害薬(tsDMARDs)
従来型合成DMARDs(CS DMARDs)
CS DMARD(Conventional Synthetic Disease-Modifying Antirheumatic Drugs、従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬)は、化学的に合成された薬剤で、関節リウマチ(RA)の進行を抑える効果があります。
症状の緩和や症を抑えるだけでなく、疾患そのものの進行を遅らせる「疾患修飾性」を持つ薬剤で、関節の破壊を防ぎ、長期的な病状管理を行うために使用されます。
- メトトレキサート(MTX): 最もよく使用される薬で、リウマチ治療の第一選択薬。
- サラゾスルファピリジン(SSZ): 軽度から中等度の関節リウマチに使用。妊娠中も使用できる
- レフルノミド(LEF): メトトレキサートの代替薬として使用。
- ブシラミン(BUC):免疫抑制による感染症リスクが低い
- イグチモド:免疫抑制による感染症リスクが低い
- タクロリムス(プログラフ):作用機序が既存のものと異なり、他剤効果不十分例でも使える
- ミゾリビン(ブレディニン):副作用が少ないため、合併症のある方でも使いやすい
生物学的DMARDs(bDMARDs)
bDMARDs(biologic Disease-Modifying Antirheumatic Drugs)は、特定の免疫細胞や炎症性物質を標的とした、生物学的プロセスを利用して作られた薬です。主に注射薬で使用されます。
- 抗TNF製剤: TNF(腫瘍壊死因子)という炎症性物質を阻害する薬剤。
- インフリキシマブ(レミケード)、エタネルセプト(エンブレル)、アダリムマブ(ヒュミラ)セルトリズマブ ペゴル(シムジア)など
- 抗IL-6受容体製剤: IL-6(インターロイキン6)を阻害する薬剤。
- トシリズマブ(アクテムラ)やサリルマブ(ケブザラ)など
- B細胞阻害剤: B細胞の活動を抑制する。
- リツキシマブ(リツキサン)など
- T細胞共刺激阻害薬: T細胞の活性化を抑制する。
- アバタセプト(オレンシア)など。
JAK阻害薬(tsDMARDs)
JAK阻害薬はtsDMARDs(targeted synthetic DMARDs)とよばれ、JAK(ヤヌスキナーゼ)という酵素を阻害することで、炎症を引き起こすシグナルをブロックする新しいタイプの薬です。経口薬として使用され、特に生物学的製剤が効果を示さない場合に使用されることが多いです。
- トファシチニブ(ゼルヤンツ)
- バリシチニブ(オルミエント)
- ウパダシチニブ(リンヴォック)
- フィルゴチニブ(ジセレカ)
- ペフィシチニブ(スマイラブ)
感染症のリスク増加(特に結核や帯状疱疹)や血栓症のリスクはありますが、JAK阻害薬は経口で服用でき、効果が速やかに現れるため、注射薬の生物学的製剤が難しい患者にとっても効果的な選択肢となります。
②補助的治療について
補助治療で用いられる薬の中には以下のようなものがあります。
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- DMARDsや生物学的製剤の効果が現れるまでの間、急性期の炎症や痛みを抑えるために用いられます。関節破壊を防ぐ効果はないため、長期的な治療には向いていません。
- ロキソプロフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、セレコキシブ(セレコックス)など
- 副腎皮質ステロイド(グルココルチコイド)
- 強力な抗炎症作用を持ち、急激な関節の炎症や症状悪化を抑えるために使用されます。主治療の効果が現れるまでの間に補助的に使用されます。長期使用で骨粗しょう症や糖尿病、感染症リスクなどがあるため、低用量かつ短期間に留めることが推奨されます。
- メチルプレドニゾロン、プレドニゾンなど
- 抗RANKL薬(デノスマブ)
- 骨破壊の進行を抑えるための補助薬として骨粗鬆症薬である抗RANKL薬(商品名:プラリア)が用いられることがあります。抗RANKL薬は、骨吸収(骨の分解)を抑制する働きがあり、従来、骨粗鬆症薬として使用されてきましたが、近年関節リウマチによる骨破壊像である骨びらんの抑制の効果が報告されています。
主治療と補助的治療を組み合わせる事で、関節リウマチによる骨破壊をメトトレキサート(MTX)など免疫の異常な働きを抑えることで炎症を減らし、関節破壊を防ぐ薬を中心に、痛みを適切にコントロールし、生活の質(ADL)を最大限に保つことを目指していきます。
詳しい関節リウマチの治療薬の違いについては⇩で!
関節リウマチの手術治療
関節リウマチ(RA)の手術治療は、薬物療法が十分な効果を示さず、関節の痛みや機能障害が進行した場合に検討されます。手術によって、痛みの軽減により生活の質を向上させ、関節の機能を回復させることを目的としています。また、変形を修正し認めの改善をはかることもあります。
RAに対する主な手術の種類です。
1. 滑膜切除術
- 滑膜の炎症が続くと、関節の破壊が進行するため、滑膜を部分的または全体的に除去する手術です。膝や手首などの関節で行われ、痛みを軽減し、炎症の進行を抑制する効果があります。リウマチ治療の一環として、特に薬物療法だけでは症状が改善しない場合や関節の破壊が進行している場合に行います。関節破壊が軽度で単関節や少関節の場合に検討されます。
2. 関節形成術
- 関節形成術は、変形した関節の形を整え、機能を改善する手術です。特に手や足の小関節で用いられ、指や足趾の変形を修正することで、機能回復や見た目の改善が期待されます。関節リウマチ患者に多い、外反母趾手術も関節形成術に含まれます
3. 関節固定術
- 重度の関節破壊が進行し、関節の痛みが強い場合に行われる外科的治療の一つです。激しい痛みや関節の不安定性がある場合に、関節を固定して動かなくすることで、痛みの改善を目標にします。薬物療法、滑膜切除術、関節形成術などで痛みが改善しない場合の最終手段として行われます。痛みの軽減と関節の安定化が主な目的であり、特に足首や手首などの関節で行われることがあります。
4. 人工関節置換術
- 人工関節置換術は、RAによる関節破壊が進行し、関節の機能が失われた場合に行われます。主に膝関節や股関節で行われ、人工関節を置換することで、痛みを軽減し、関節の機能を回復させます。近年、関節リウマチで早期から障害を受ける部位である、手の人工関節も適応されつつあります。第2、第3関節(PIP関節、MCP関節)などで行われますが、耐久性の問題などがあります。
5. 腱再建術
- RAによって腱が破手壊されたり断裂したりすることがあります。腱再建術では、損傷した腱を修復し、手や足の機能を改善します。特に手指の腱が影響を受けた場合に行われることが多いです。
手術治療は、薬物療法での治療が困難な場合に、適切な手術が選ばれることで患者の生活の質が大きく向上する可能性があります。
関節リウマチの評価方法
関節リウマチ(RA)の評価に使用される「スケール」は、患者の病状や治療効果を客観的に測定するために開発された指標です。代表的なスケールには、DAS28やSDAI、CDAIなどがあります。それぞれ異なるアプローチで炎症の程度や疾患の活動性を評価します。
①DAS28(Disease Activity Score 28)
DAS28は、関節リウマチの活動性を評価するために広く使われている指標です。28カ所の関節(肩、肘、手、膝)について、**腫脹関節数(SJC)と圧痛関節数(TJC)を評価し、さらにCRP(C反応性蛋白)またはESR(赤血球沈降速度)**の数値、および患者自身の全般的な健康状態の評価(VAS)を組み合わせて算出されます。
DAS28の数値の解釈
- DAS28 ≤ 2.6:寛解(疾患活動性がほとんどない状態)
- DAS28 2.6~3.2:低疾患活動性
- DAS28 3.2~5.1:中等度疾患活動性
- DAS28 > 5.1:高疾患活動性
DAS28は、治療効果の追跡や疾患活動性の管理に役立ちます。
②SDAI(Simplified Disease Activity Index)
SDAIは、よりシンプルに関節リウマチの活動性を評価する指標で、次の5つの要素を合計してスコアを算出します。
- 圧痛関節数(28関節)
- 腫脹関節数(28関節)
- 患者の自己評価(VAS)
- 医師による疾患活動性の評価(VAS)
- CRP(mg/dL)
SDAIの数値の解釈:
- SDAI ≤ 3.3:寛解
- SDAI 3.3~11:低疾患活動性
- SDAI 11~26:中等度疾患活動性
- SDAI > 26:高疾患活動性
SDAIは、CRPが利用できない場合にも簡単に評価ができるため、臨床現場でよく使われます。
③ CDAI(Clinical Disease Activity Index)
CDAIは、SDAIのCRPを除いたバージョンで、完全に臨床的な評価に基づきます。CRPやESRの数値を用いず、次の4つの要素を合計してスコアを算出します。
- 圧痛関節数(28関節)
- 腫脹関節数(28関節)
- 患者の自己評価(VAS)
- 医師の評価(VAS)
CDAIの数値の解釈:
- CDAI ≤ 2.8:寛解
- CDAI 2.8~10:低疾患活動性
- CDAI 10~22:中等度疾患活動性
- CDAI > 22:高疾患活動性
CDAIは血液検査を必要とせず、迅速に評価できるため、外来診療で特に有用です。
④ HAQ(Health Assessment Questionnaire)
HAQは、患者の日常生活における機能的障害を評価するための自己報告式アンケートです。関節リウマチによる身体機能の障害を測定することで、疾患の影響をより広い視点から把握します。
- 評価項目:起立、歩行、食事、着替えなどの8つの日常動作について、患者がどの程度支障をきたしているかを0~3点で評価。
- HAQスコア:0~3の範囲で、0は障害がないことを示し、3は最も重度の障害を示します。
まとめ
関節リウマチは、自己免疫の異常によって関節が炎症を起こし、痛みや腫れ、関節の破壊を引き起こす慢性疾患です。主に手指や足の関節から症状が始まり、進行すると日常生活に支障をきたすことがあります。早期診断と治療の開始が鍵となるため、症状が疑われる場合ははやめに医療機関を受診しましょう。適切な治療で、病気と向き合いながら快適な生活を送ることが可能です。